生活習慣病について
生活習慣病とは、食べ過ぎや飲み過ぎ、偏食、運動不足、睡眠不足、喫煙、ストレスなど、さまざまな生活習慣の乱れが積み重なることを主な原因として発症する病気の総称です。
代表的なものに、糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症(痛風)などが挙げられます。また、糖尿病・高血圧・脂質異常症のリスクの高さと肥満が共存するメタボリックシンドロームも、生活習慣病に分類されます。
いずれも、初期にはほとんど症状がないものの、動脈硬化は着実に進行しており、心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気のリスクを高めます。
健康診断などで数値の異常を指摘されたとき、「症状がないから」と再検査や精密検査を先延ばしにするのは厳禁です。必ず指示に従い、検査、あるいは治療を受けましょう。
早期であれば、お薬を使わずに、生活習慣の改善のみによって数値をコントロールすることが可能です。
生活習慣病になる原因
生活習慣病は、日常生活におけるさまざまな因子がリスクとなります。
- 肥満である
- アルコールをよく摂る、飲み過ぎてしまうことがある
- タバコを吸う
- 睡眠不足
- 生活リズムが不規則
- ストレスが溜まっている自覚がある
食事面
- 食べ過ぎ、飲み過ぎ、早食い
- 脂っこいもの、濃い味付けのものをよく食べる
- 魚よりも肉をよく食べる
- 野菜、果物をあまり食べない
- 清涼飲料水をよく飲む
- 間食、夜食が多い
運動面
- 運動する習慣がない
- 1日の歩数が7,000歩未満
生活習慣病の主な疾患
糖尿病について
摂取された糖質(でんぷんや麦芽糖など)は消化されてブドウ糖や果糖となって体に吸収されます。ただ、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって、その後正常な値へと戻ります。
糖尿病とは、インスリンの分泌量が低下したり、インスリンが効きにくくなることなどによって、血糖値が高くなってしまう生活習慣病です。
初期にはほとんど症状がありませんが、動脈硬化を進行させるため、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。加えて、網膜症・腎症・神経障害といった、生活の質を大きく低下させる「糖尿病の3大合併症」のリスクもあります。
なお糖尿病は、原因に応じていくつかに分類することができます。
糖尿病の種類
Ⅰ型糖尿病
自己免疫の異常によって、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊されることを原因とし、インスリンがまったくまたはほとんど分泌されなくなり、発症します。
主に小児~青年期で発症します。
Ⅱ型糖尿病
生活習慣の乱れを原因とする「生活習慣病としての糖尿病」はこちらのⅡ型糖尿病であり、糖尿病全体の9割以上を占めます。
食事や運動に関する生活習慣の乱れによって、インスリンの働きが低下することで発症します。
主に中高年以降で発症します。
当院で主に扱うのはこのⅡ型糖尿病となります。
妊娠糖尿病
妊娠によって胎盤からインスリンの働きを抑制する酵素が過剰に分泌され、軽度の糖代謝異常が起こっている状態です。
お母さん・赤ちゃんへの健康への悪影響が懸念されるため、治療が必要です。
糖尿病の症状は?
気づくのは難しい?
糖尿病を発症しても、初期にはほとんど症状がありません。そのため、症状が現れた段階では、糖尿病や動脈硬化がある程度進行しており、あわせて心筋梗塞や脳卒中のリスクも高くなっている可能性があります。
ただ、「検査をしても見つからない病気」ではありません。年に1度の健康診断、人間ドックなどで血糖値の異常を指摘されたときには、症状の有無に関係なく、当クリニックにご相談ください。
また、以下のような症状がすでに現れているときには、早急な受診が必要です。
このような症状があれば早めの受診を
- 喉がよく渇く、よく水を飲む
- すぐにお腹が空く、食べているのに体重が減る
- 倦怠感がある、疲労感が抜けない
- 多尿・頻尿
- 視界がぼやける、かすむことがある
- 手足の痺れ、痛み
糖尿病の合併症
以下の3つは、糖尿病の3大合併症と呼ばれています。合併の予防のためには、糖尿病と診断された時点で、適切な治療と、定期的な検査を開始することが大切になります。
糖尿病網膜症
慢性的な高血糖によって眼の網膜の血管が障害され、視力低下などの症状を引き起こします。放置していると、最終的には失明に至ります。
糖尿病と診断された時点で、眼科で定期的な検査を受ける必要があります。
糖尿病神経障害
慢性的な高血糖によって、手足の神経に異常をきたします。手足(特に足)に痺れや痛みが出現します。
進行すると、知覚の低下や傷の治りにくさによって、潰瘍や壊疽を起こします。最悪の場合には、足を切断することになります。
糖尿病腎症
慢性的な高血糖によって腎臓の血管が障害され、腎臓の機能が低下します。老廃物を尿として適切に排泄することが困難になり、放置すると透析治療が必要になります。
人工透析には、週に3回程度、1回あたり4~5時間を要します。お仕事など日常生活への支障は多大なものとなります。
糖尿病の治療法
まずは食事療法・運動療法などによって生活習慣の改善に取り組みます。これらで十分な効果が得られない場合に、薬物療法を導入します。
食事療法
患者さまの年齢・性別・運動量などをもとに、適正なエネルギー量を算出し、その範囲内で栄養バランスを考えた食事を摂ります。
糖質(ご飯・パンなどの主食)の摂取を後回しにしたり、低糖質にするといった工夫も有効ですが、どういった種類の食事療法がいいかは個人差が大きい印象を持っており、個人個人に合わせた丁寧な指導をさせていただきます。
運動療法
ウォーキング、軽いジョギング、水泳など、有酸素運動をできるだけ毎日、最低20分程度取り入れます。通勤時に少し早く歩くなどすると、これも運動療法となります。また10分ずつ、2回の運動に分けても構いません。
筋肉を動かすのには糖が必要です。筋肉が増えれば糖の消費が増えるので無酸素運動である筋力トレーニングも効果的です。
有酸素運動にしても、無酸素運動にしても、急に無理な量を行うことは避けましょう。ケガをしてしまうと、運動療法そのものができなくなりますし、モチベーションの低下に繋がります。
薬物療法
インスリンの分泌を促す薬、インスリンの働きを改善する薬、血糖値の上昇を防ぐ薬などを使用します。
場合によっては、インスリンを自己注射するインスリン療法も必要になります。
高血圧
高血圧とは、慢性的に血圧が高くなっている状態を指します。診察室での血圧測定において最高血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上である場合に、高血圧と診断されます。
高血圧の症状・原因
症状
高血圧は、初期にはほとんど症状がありません。進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
- 頭痛
- 肩こり
- めまい
- 不整脈
原因
塩分の摂り過ぎ、飲み過ぎ、ストレス、喫煙、肥満、運動不足などの生活習慣の乱れを主な原因とします。
高血圧の治療法
1日の塩分摂取量を6グラム未満に抑えた食事療法、適度な運動を取り入れる運動療法が中心となります。
食事療法・運動療法で十分な効果が得られない場合には、血圧を下げるお薬を使った薬物療法を導入します。
脂質異常症
脂質異常症とは、LDLコレステロール値や中性脂肪値が高くなりすぎる、HDLコレステロール値が低くなりすぎる生活習慣病です。
脂質異常症の症状・原因
症状
脂質異常症は、進行してもほぼ無症状です。健康診断などで数値の異常を指摘された場合は、無症状であっても必ず再検査や精密検査、治療を受けましょう。
原因
食べ過ぎ・飲み過ぎ、脂っこいものの摂り過ぎ、運動不足、ストレスなどの生活習慣の乱れを主な原因とします。
脂質異常症の治療法
まずは食べ過ぎ(特に脂っこいもの)・飲み過ぎを控えた食事療法、適度な運動を取り入れた運動療法を行います。肥満がある場合には、無理のないダイエットも必要です。
食事療法・運動療法で十分な効果が得られない場合には、コレステロールを下げる薬、コレステロールの生成に関連する酵素を阻害する薬などを使用した薬物療法を導入します。
メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームとは、一定以上の腹囲(男性:85センチ以上、女性:90センチ以上)があり、かつ高血圧・高血糖・脂質代謝異常のうち2つ以上が認められる状態です。
高血圧・糖尿病・脂質異常症のリスクが非常に高くなります。
メタボリックシンドロームの
症状・原因
症状
基本的に無症状です。糖尿病・高血圧・脂質異常症を合併している場合にはその症状が現れることがあります。
原因
食べ過ぎ・飲み過ぎ、運動不足などによる生活習慣の乱れ、および内臓脂肪の蓄積を原因とします。
メタボリックシンドロームの
治療法
食べ過ぎ・飲み過ぎを控えながら野菜を多く摂取する食事療法、無理のない運動療法を組み合わせて、内臓脂肪を減らしていきます。
糖尿病、高血圧、脂質異常症を合併している場合には、それらの治療も必要です。
高尿酸血症(痛風)
高尿酸血症とは、血中の尿酸が増えすぎ、尿酸値が7.0mg/dl以上となった状態です。
そして、足の親指の付け根の関節などで尿酸が結晶化し、急激な激しい痛みを引き起こすのが、痛風です。
高尿酸血症(痛風)の症状・原因
症状
高尿酸血症のみでは、自覚症状が見られません。痛風を発症したときには、発症した関節の激しい痛み、腫れなどを伴います。
足の親指の付け根の他、足の甲、アキレス腱、膝関節、手関節で発症することがあります。
原因
食べ過ぎ・飲み過ぎ、肥満、激しい運動、腎臓の機能低下など、生活習慣の乱れを中心とした原因が挙げられます。
高尿酸血症(痛風)の治療法
高尿酸血症に対する治療では、ビール、レバーなどのプリン体の多い食品を控え、菜食を中心にした食事療法を行います。
痛風を発症した場合には、消炎鎮痛剤などで対症療法を行い、症状が落ち着いてから高尿酸血症に対する治療を行います。